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決済代行サービス「PayPal」と「Stripe」はどちらがいいの?

概要

皆さんは決済代行サービスに何を利用されているでしょうか?
私は専ら「PayPal」でしたが、ここ最近話題になっている「Stripe」も有料記事の決裁で導入してみました。

そこで、この両者を比較してメリット・デメリットを確認してみようと思います。
どちらも一長一短ありますので、ご自分のサイトに合ったサービスの導入を検討て下さい。

決済代行サービスとは?

そもそも決済代行サービスとはどんなものなのでしょうか?
簡単に言えばお客様とお店 (Web サービス) の間に入って決済処理を代行してくれます。

銀行振込や現金などのやり取りではこのような決済の代行は必要ないでしょう。
しかし、以下のような場合には決済代行サービスが必要になってきます。

もっと色々な場合も想定されますが、上記に当てはまることが多いのではないでしょうか?

決済代行サービスにはPayPalやStripeなどがある

こうした決済代行サービスとして「PayPal」や「Stripe」があります。これらは Web 上での決済に特化したサービスです。
実店舗などでレジ機と連携させる場合には、CM などでお馴染みの AirPAY などがあります。

クレジットカード決済を行いたい

キャッシュレス決済が進む中、やはり王道のキャッシュレス決済手段はクレジットカードです。
しかし、クレジットカード会社と直接取引するには豊富な資本と複雑な決済処理の開発、強固なセキュリティ設計などとても手が出せるものではありません。

そこで直接の取引をせずにクレジットカード決済を行う為、仲介にあたる「PayPal」や「Stripe」などの決済代行サービスの出番というわけです。
これらのサービスは決済の要となる処理を手数料を支払うことで代行してくれます。
しかも、複数のクレジットカード会社との取引が一本化できることも大きなメリットです。

お客様はその代行サービスとクレジットカード会社との間で決済を完了させ料金を支払います。
そして代行を依頼する私たちは、手数料を引いた金額を受領することでお客様からの支払いを受け取ることができます。

決済完了を自動的に確認して即座にサービスを提供したい

商品の発送を伴うサービスなら即座にお客様のお支払を確認する必要はないかもしれませんが、ダウンロード販売や有料記事の購読などは決済が終わればリアルタイムでサービスを提供できなければなりません。
自分がユーザの立場になれば当然そう思うことでしょう。

リアルタイム性が求められる決済では決済代行サービスを利用することでお客様のお支払完了をすぐに確認することができ、サービスを遅延なく提供できます。

「PayPal」と「Stripe」のサービス比較

「PayPal」と「Stripe」の基本的なサービス仕様の比較を下表にまとめます。
手数料などは国内で円取引の場合です。

項目 PayPal Stripe
初期費用 0円 0円
月額費用 0円
※月額費用が必要なサービス有
0円
決済手数料 (通常) 3.6% + 40円
(少額) 5.0% + 7円
※少額決済は事前申請が必要
3.6%
返金手数料 無し
※返金額に応じて決済手数料の%分は返ってくる
無し
※決済手数料は返ってこない
手数料割引 30万円/月以上で段階的に手数料割引 500万円/月以上などの条件で交渉可
決済方法

各種クレジットカード
(VISA / MASTERCARD / JCB
AMERICAN EXPRESS / DISCOVER)

銀行振込
(みずほ銀行 / 三井住友銀行 / 三菱UFJ銀行
ゆうちょ銀行 / りそな銀行)

その他
(UnionPay)

各種クレジットカード
(VISA / MASTERCARD / JCB
AMERICAN EXPRESS / DISCOVER / Diners)
※JCBは利用申請が必要

その他
(ApplePay / GooglePay / MicrosoftPay / AliPay
Masterpass / VisaCheckout / WeChatPay)
※WeChatPayはベータ版

払出手数料 250円
5万円以上で無料
0円
払出タイミング 手動のみ 毎週 / 毎月 / 手動
アカウント認証 郵送の認証番号 SMSによる2段階認証

ぱっと見の特徴だと PayPal は手堅く広く対応してくれているかな、と思います。
逆に Stripe は今はやりの○○ Pay に広く対応していて軽快な印象ですね。

PayPalのメリット

では PayPal のメリットについて細かく見ていきましょう。

PayPalの基本使用料は0円

まずは大きなメリットとして「基本的な利用料金が無料」であることが挙げられます。これは Stripe も同じです。
これはスタートアップ企業や小売店には重要です。

売上が少ない時に月額使用料などが掛かってくると大きな負担になってしまうので非常にありがたい仕様です。
PayPal に支払う手数料は決済のたびに決済額に応じてということになります。

PayPalは返金の際に手数料が一部戻ってくる

次に返金が生じた場合、PayPal に支払う手数料の一部が戻ってくることがメリットとしてあります。(詳しくはユーザ規約をご確認下さい)
Stripe との大きな違いの一つです。

返金される手数料は決済手数料の内、決済額に比例する3.6%分のみです。固定費の40円は全額返金しても返ってきません。
10,000円を決済して5,000円を返金した場合、PayPal 口座に残る金額は以下のように計算できます。
はじめから (10,000円 - 5,000円) = 5,000円 を決済して入金される場合と同じ金額が口座に残ります。

(決済後の入金額) 10,000円 x (100% - 3.6%) - 40円 = 9,600円
(返金時の出金額) 5,000円 x (100% - 3.6%) = 4,820円
-----------------------------------------------------------------
(PayPal口座残高) 4,780円 ※はじめから5,000円決済した場合と同じ

Stripe の場合にははじめの決済手数料は40円安いですが、返金時は金額に関わらず手数料が一切戻ってこないので返金が頻繁に想定される使い方では PayPal の方が決済手数料は少なくなると言えますね。

PayPalは少額決済で手数料がお得になるプランが提示されている

手数料に関してもう一つのメリットに少額決済での手数料を抑えることができるプランがはじめから提示されていることがあります。(要申請)
2,357円以下 (国内取引) であれば、固定費が下げられて手数料を抑えることができます。有料記事の決済などに便利ですね。
Stripe は交渉次第なのでハードルが高いです。

PayPalは月間の決済額に応じて手数料が下がっていく

月間の決済額が30万円以上であれば上記のように手数料を抑えることが可能です。(要申請)
これも Stripe では都度交渉が必要なことと、500万円/月以上という条件があり PayPal にメリットが感じられます。

PayPalユーザはIDとパスワードだけで決済可能

PayPal は買い手保護にも大きなメリットがあり、PayPal アカウントさえ作ってしまえばクレジットカード情報などの入力無しに決済が行え販売店側にユーザの決済情報を非開示で決済できますし、商品が届かない・ダウンロードできないなどの場合にはユーザは返金してもらえます。

これはヘタなポイント還元などよりもよっぽどユーザにとってはメリットがあると思います。
PayPal での決済に対応していれば海外業者からの商品購入も安心して行えます。(外国為替にも対応)
(私は海外コンテンツの場合には必ず PayPal での支払いを利用しています)

PayPalのデメリット

そんな PayPal にも当然デメリットはあります。

月額3,000円のウェブペイメントプラスを使わないと基本的には購入者はアカウント作成が必須

やはり一番のデメリットは決済には基本的にユーザが PayPal アカウントを作成する必要がある、ということでしょう。
販売店側にユーザの情報を渡さないという意味では非常に理にかなっていますが、この時代に少し面倒ではあります。
※キャッシュレスが浸透している海外では PayPal も十分普及していてそれほど問題ではないかもしれませんが、日本では PayPal が全く浸透していない為です。

月額3,000円を払えばPayPal アカウントを作成せずにクレジットカード決済ができるフォームを <iframe> で埋め込むことができます。
でも、月額費用が固定で掛かってくるのは少し困りますよね。それなら他にも選択肢があります。

API を利用して申請すれば月額費用も掛けずにアカウント不要のクレジットカード決済を実現できると思いますが、ユーザのカード情報を扱うことになるのでセキュリティ的にとても難しくなります。
月額費用を抑えたい小規模事業ではカード情報流出のリスクの方が大きいので手を出せません。。。

PayPalでの本人確認は郵送の暗証番号が必要で2~4週間掛かる

これもセキュリティを高める為とのことと思いますが、ビジネスアカウント登録に時間が掛かってしまいます。
(アカウントの開設と支払いの受付は即日にできます)
本人確認書類の審査から暗証番号の郵送までに2~4週間ほど掛かるのでその期間は PayPal 口座から払出ができません。

売上をすぐにでも自分 (会社) の銀行口座に入金したい場合には大きなデメリットです。
この点、Stripe は即日から売上を手にすることができます。

また、銀行口座に払い出すタイミングは自動化できないので、手動で行う必要があります。
5万円未満では手数料250円が掛かるのもちょっとしたデメリットです。
ここも Stripe は自動で手数料もないのでメリットを感じるポイントでしょう。

PayPalで動的な決済を作成するには技術的なハードルが高い

PayPal では EC サイトで必須になる動的な決済作成がやや難しいというデメリットがあります。
SDK も用意されていますが、開発者向けのドキュメントが分かりにくく全て英語なのでハードルは高いです。
Stripe の方がドキュメント類はよく整備されていると思います。(Stripe は開発の容易さもウリの一つです)

金額固定だったり手動で作成する場合にはメール決済や決済ボタンの作成が簡単にできるのに残念です。
(動的な決済作成があまりに簡単だとそれはそれで怖いですが)

PayPal での動的な決済を開発したい方は、以下の記事を参考にして頂ければ幸いです。(有料300円です)
PayPal API (version 2) を使ってクレジットカード決済を実装しよう!

Stripeのメリット

次に Stripe のメリットを見ていきましょう。

Stripeは決済手数料の3.6%以外は一切掛からないという分かりやすい料金体系

Stripe は料金体系が非常に分かりやすい、というよりも決済ごとに掛かってくる手数料3.6%しか掛かりません。
初期費用や月額費用、サービスごとの月額利用料などは一切ありません。シンプルで分かりやすいです。
PayPal も基本無料ですが、サービスによっては月額費用があるのでここは Stripe の方がスッキリしています。

Stripeは各種クレジットカードに加え、各種ウォレット払いにも幅広く対応

Stripe は各種クレジットカード決済はもちろん、〇〇Pay という各種ウォレット払いにも幅広く対応しています。
選択肢が広いことはユーザにとって嬉しいことですよね。
PayPal は銀行振込はできますが、流行りのウォレット払いに未対応なのでポイントです。

また、PayPal と違いユーザはアカウント登録せずにクレジットカード決済などを完了できます。
これは決済のハードルが低くなるので成約率が高くなると期待できますね。

※ Stripe にリダイレクトしてクレジットカード情報などを入力すれば販売店側からはクレジットカード情報が確認できないのでセキュリティ的にも安心です。

デベロッパー・ファーストを掲げるStripeは開発が用意

Stripe はデベロッパー・ファーストを掲げ、開発着手の容易さをウリの一つにしています。
予め用意された (構築済みの) チェックアウトフォームを利用した手順に従えば、ほんの1時間もあれば支払いの受け取りを始めることができます。

手軽な決済作成方法だけでなく、API に直接利用する高度な決済方法なども用意されています。
そして、いずれの手法を利用する場合には分かりやすいドキュメントを確認できます。(簡単な英語で書かれています)
PayPal 同様に各言語用の SDK も提供されているのでより簡単に実装可能です。

また、Stripe のダッシュボードから API へのアクセスログの詳細などを確認できるのも開発に役立てられます。
リクエスト情報とレスポンス情報の両方を確認できるので開発時のデータ確認を簡単に行えます。

Stripeのデメリット

では、Stripe のデメリットです。

Stripeは返金した場合に元の決済手数料は戻ってこない

最大のデメリットは返金時に決済手数料が一切戻ってこないことでしょう。
PayPal では%分が返金額に応じて返ってきましたが、Stripe はいくら返金しても手数料はそのままです。

PayPal 同様に10,000円を決済して5,000円を返金した場合を考えると以下のようになります。
返金が多い場合にはよく考えて導入したいところです。

(決済後の入金額) 10,000円 x (100% - 3.6%) = 9,640円
(返金時の出金額) 5,000円 x (100% - 0%) = 5,000円
-----------------------------------------------------------------
(Stripe口座残高) 4,640円 ※PayPalの場合は4,780円

Stripeのボリューム割引は500万円以上とハードルが高い

毎月の決済額が多い場合には手数料を抑えたいと考えますよね。
Stripe ももちろん対応してもらえますが、500万円/月以上とハードルが高いです。(PayPal は30万円以上~)

また、営業と交渉次第ですのでどれだけお得になるのか不透明です。
交渉力があれば非常にお得になるかもしれませんが、ちょっと不安ですよね。

まとめ

以上、PayPal と Stripe の比較でした。
どちらが良いかは一概に言えません。メリット・デメリットを良く検討してどちらを導入するか、それとも両方導入するか判断して下さい。

選択肢は広い方が良いと思うので両方の決裁方法に対応していると便利だと思います。
余裕があればどちらの決裁も利用できるように対応すると良いでしょう。

Stripe の API を利用した決済作成方法については別途記事を投稿するつもりなのでその際はぜひご確認下さい。
(一部、有料記事になるかもしれません……)

PayPal 決済は既に記事にしてありますので、PayPal 導入の際はご参照下さい。
PayPal API (version 2) を使ってクレジットカード決済を実装しよう!

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